内覧レポート

【内覧レポート】国立新美術館 進化を続ける草間彌生の大回顧展

国立新美術館では、2月22日(水)から5月22日(月)まで、「草間彌生 わが永遠の魂」を開催している。近年草間の名声は飛躍的に高まり、昨年度ArtReviewの「今年現代アートの世界で最も影響力のあった人物100人」では、日本人として唯一名前が載った。文化勲章を受賞した姿も記憶に新しい。本展は「21世紀の草間彌生(1)」「初期作品」「ニューヨーク時代 1953-73」「21世紀の草間彌生(2)」「帰国後の作品 1970-2000」の5部で成り立っており、草間の過去最大規模の個展と言ってよいだろう。

 

水玉とかぼちゃだけではない。進化し続ける前衛芸術家、草間彌生の魅力

壁一面に並ぶ「わが永遠の魂」

2009年から草間が精力的に取り組んでいる大型の絵画シリーズ「わが永遠の魂」。草間彌生といえば”水玉”や”かぼちゃ”のイメージを持つ人も多い。しかし、会場を入って目に飛び込んでくるこの大型連作に包まれると、そうした考えを覆されるだろう。2004年から4年かけて制作された「愛はとこしえ」で、彼女は水玉だけでなく様々なイメージを巨大なカンバス上に展開して見せた。今回の「わが永遠の魂」は、前作をさらに上回る大きさのカンバスに、鮮やかな色彩で無数のイメージが描きこんでいる。会場を覆い尽くす絵画の圧倒的な気迫に、多くの人が息を飲む。

 

水玉、かぼちゃ…、幼少期の記憶と共に

草間彌生「無題」

展覧会では新作「わが永遠の魂」だけでなく、初期作品から始まりNYでの活動期間に制作された作品が網羅されている。1929年、草間は長野県松本市で種苗業を営む両親のもとに生まれた。両親の関係やつきまとう幻覚症状に悩まされていた草間にとって、絵を描くことは彼女の拠り所となっていた。そして草間は反対する母を説得し、京都の学校で日本画を学ぶ。そんな初期作品においても、水玉のパターンや彼女の愛するかぼちゃのイメージがすでに現れている。

 

NYで表現はさらに前衛的に

草間のソフトスカルプチュア作品

松本でしばらく制作を続けたのち、彼女はより自由な創作の場所を求めて、単身ニューヨークへ渡る。当時はアメリカでも、まだまだ女性の社会進出が当たり前でなかった時代。外国へ渡ったとはいえ、芸術家として前衛的な活動を続けていくのは、そう簡単ではなかったに違いない。

しかしNY時代の作品を見ると、海外での制作と芸術家との交流が、草間の表現がいかに多様にしていったかがよく分かる。男根状の突起を椅子やはしご一面に生やしたソフトスカルプチュア作品や、ハプニングと呼ばれる野外パフォーマンスなど、草間が自身の表現のためにどれだけ多くのやり方を模索していたか、そのひたむきな制作の跡が見て取れる。

 

社会的に展開していくことでさらに浸透していく草間彌生。

大阪のクリエイティブユニットgrafとコラボレーションした「黄樹リビングルーム」

洋服、シャープペン、家具…。アーティストとコラボしたグッズはもう当たり前の時代だが、草間は自身の作品をいち早く商業的に展開していたアーティストの一人だ。1968年には自身のデザインしたドレスを制作・販売するブティックを立ち上げ、その他にも多くの企業とのコラボレーションも実現させている。そうした身近な草間彌生は、現在多くの若い草間彌生ファンを生み出すことに成功している。

「かぼちゃ」

自身の内奥にある精神世界を展開するために試行錯誤を凝らす草間彌生にとって、芸術とは自分と他者とのほぼ唯一のコミュニケーションのあり方のように見える。そして彼女の素晴らしいところは、その長い模索を通して、自分を客体化し、誰の人生にも存在する愛や平和への想いという普遍的なテーマへと昇華せしめた点だと、今回の展覧会で確信した。87歳にして見る人が驚くような新しい表現をし続けることができるアーティストが、果たして世界にどのくらいいるだろう。本当に稀有な才能である。

 

トップ画像:報道陣に手を振る草間彌生

開催期間 2017 年2月22日(水)-5月22日(月)

休館 毎週火曜日  ※5月2日(火)は開館

時間 10:00 – 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)

※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館

会場 国立新美術館 企画展示室1E

住所 東京都港区六本木7-22-2

公式ページ http://kusama2017.jp

 

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