内覧レポート

【内覧レポート】天才絵師、河鍋暁斎の名品が集うゴールドマンコレクション

2月23日(木)から4月16日(日)までBunkamura ザ・ミュージアムでは、世界有数の河鍋暁斎コレクションを有するゴールドマン氏の所蔵品で、「ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」を開催している。ある暁斎の絵を売った翌朝、後悔の念に襲われたまま目を覚ましたゴールドマン氏。その絵を何年もかけて取り返したことが、一連の暁斎コレクションのきっかけだったそうだ。そんなコレクターと絵画の運命的な出会いから生まれた本展覧会の一部をお届けする。

当時から海外で注目されていた河鍋暁斎という非凡な絵師

河鍋暁斎 《鍾馗と鬼》 明治15(1882)年 紙本着彩、金泥 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo:東北芸術工科大学 杉山恵助

河鍋暁斎(1831-1889)という画家をご存知だろうか。3歳にして捉えたカエルの写生をしていたという暁斎は、7歳で歌川国芳の画塾に入門した後、狩野派の前村洞和、さらに狩野洞白の画塾で学び、若干19歳で狩野派の修行を終えている。当時海外から多くの研究者、ジャーナリストやアーティストが暁斎の元を訪れた記録が残されている。その卓越した画力で、動物、美人、歴史など、どのテーマをとっても群を抜いた名作を生み出した。

暁斎のピンチを救ってくれた鴉(カラス)

河鍋暁斎 《烏瓜に二羽の鴉》 明治4-22(1871- 89)年 絹本着彩 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

そんなずば抜けた才能の持ち主の暁斎だったが、日本での知名度は低いままだった。それは彼が前科者だったことによるのかもしれない。明治3年、暁斎は明治政府の高官を揶揄した風刺画を描いて逮捕されていた。当時の日本人は、前科のある暁斎を声高に讃えることにためらいがあったのであろう、十分な評価が与えられずにいた。

展覧会にもゴールドマン所蔵の鴉図がたくさん展示されている

そんな暁斎に転機が訪れる。明治14年(1881年)の第二回内国勧業博覧会に出品した「枯木寒鴉図」が絵画部門で最高賞を受賞し、暁斎の名声を回復した。暁斎にとって鴉は自身の窮地を救ってくれた大切な動物だったのだろう。数多くの鴉図が残されている。

 

人間社会を模倣しているカエルや象がとてもユーモラスだ

鴉だけでなく、暁斎は鷺、象、虎といった動物画も数多く残した。彼の学んだ狩野派の伝統がうかがえる作品もあれば、遊び心溢れる戯画もあり、暁斎の画家としての幅の広さが見て取れる。

 

ユニークな暁斎の美人画に見る近代の萌芽

河鍋暁斎 《地獄太夫と一休》 明治4-22(1871- 89)年 絹本着彩、金泥 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

暁斎の描く美人は、それまでのものと比べると目鼻立ちがはっきりしており、どこか西洋文化のとの融合を感じる。明治末から大正初期には、水野年方(1866-1901)や鏑木清方(1878-1972)らの描く近代的美人画が到来したが、彼らに先んじて暁斎はいち早く西洋的な美人画を浮世絵などで描いている。中でも「地獄太夫と一休」は、暁斎の描く美人画の最高傑作の一つと讃えられている。

暁斎の生きた時代、伝統的な流派にはそれぞれ描くべき画題が決められており、新しい主題というものはまずありえないはずだった。しかし暁斎の作品には構図にも画題にも、流派にとどまらないユーモラスな個性がある。そんな彼の個性こそが日本画が示し始めた近代性の萌芽なのだ。

逹磨を主題とした仏画を多く残した暁斎

描いたものが今にも動き出しそうな迫力を持つ一方で、どこかに見る人をクスッと笑わせる遊び心がある暁斎の作品。ゴールドマンのコレクションは、他にもロンドンで好評を博した春画や逹磨などの仏画など、多岐にわたる暁斎の功績を網羅している。一緒に訪れた人とおもしろいところを見つけて楽しめる展覧会だ。

 

トップ画像:河鍋暁斎 《百鬼夜行図屏風》明治4-22(1871-89)年 紙本着彩、金砂子 イスラエル・ゴールドマン コレクション Israel Goldman Collection, London Photo:立命館大学アート・リサーチセンター

開催期間 2017 年2月23日(木)-4月16日(日)

休館 会期中無休

時間 10:00-19:00(入館は18:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)

会場 Bunkamura ザ・ミュージアム

住所 東京都渋谷区道玄坂2-24-1

公式ページ 「ゴールドマンコレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力」展

長野県生まれ。19世紀イギリス・アイルランドの歴史や文化を研究しつつ、ライターとして活動している。アカデミアで行われている研究を、より多くの人に価値あるコンテンツとして届けたいと日々考えている。

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