コラム 特集

自然史を動かした化石ハンター、メアリー・アニング

メアリー・アニング(Mary Anning、1799年5月21日 – 1847年3月9日)は、“She sells sea shells by the sea shore”.と言う早口言葉のモデルだと言われている。彼女が海辺で売っていたのは実は化石だったことを知る人はどのくらいいるだろう。

 

人気観光地が化石採掘場に

メアリー・アニングはイギリス南西部ドーセット州にあるライム・レジス村に生まれた。産業革命の影響は田舎のライムにも確実に訪れており、18世紀半ばにドーチェスター(ドーセット州の州都)とエクセターを結ぶ鉄道が開通すると、夏には都会から観光客が殺到し、ライムは一躍人気観光地になった。当時のイギリスの人気作家ジェーン・オースティンもライムを訪れており、小説『説きふせられて』にも生かされている。

メアリーが化石を発見したライムの崖。photo by Kevin Walsh from Flickr

ライムは単なる海水浴場ではなかった。昔ながらの景観が保たれていたライムの海辺にはジュラ紀地層が露出しており、珍しい化石が大量に採れたのだ。当時博物学ブームだったイギリスでは、考古学者でないアマチュアの人々もアクセサリーのように化石を欲しがり、高値で売れた。そこに目をつけたメアリーの父は子ども達と一緒に化石を売る副業ビジネスに乗り出した。その後結核で若くして亡くなってしまった父の跡を継ぎ、メアリーは家計を助けるためにライムの崖を探索して化石を発掘して歩いた。

 

メアリーの大発見と科学の発展 —「生物は絶滅する!」

父の死からわずか数ヶ月後、12歳だった少女メアリーは嵐の翌朝の崖に尾ひれのついた「クロコダイル」の完全骨格を発見する。化石はすぐさま掘り起こされて、アニング家に運ばれ、発見は一大ニュースとして広まった。当初「クロコダイル」と思われていたその化石は、後に議論を経て「イクチオサウルス」に分類される。

「メアリー・アニングが発見した魚竜」©The Trustees of the Natural History Museum, London

その後メアリーは24歳の時に世界初の首長竜プレシオサウルスを発見する。イクチオサウルスとクロコダイルの中間のようなプレシオサウルスの姿は、この世にはすでに絶滅した種があるのかもしれないという新しい生物学の考えを支えた。

当時の科学では、「地球上のあらゆる生物は神が最初に創り出したありのままの姿で存在している」と信じるものがほとんどだった。化石の生物も当初は、「ノアの箱船」の洪水のときに海の底に沈んだ生き物だと考えられていた。

化石から時代によって積み重なった地層の存在を明らかにしたウィリアム・スミスの所蔵品。

生物が「進化」をしたり、ある種が「絶滅」したりするということなど、考えられないことだった時代。そんな中、何の教育も受けていない田舎町の娘が、国内外の碩学を唸らせてしまうような物的証拠を数々発掘してしまうのだから、さぞ愉快だったことだろう。

数々の大発見で近代の生物学に大きな貢献を果たしたメアリー・アニング。もちろんアニングだけでなく、同時代には近代の進化論を支えた人たちがたくさんいる。国立科学博物館の研究員の方も「今でも我々は本当にたくさんの人たちから協力をしてもらって研究をしてします。なんせこの世界には数え切れないくらいの生き物がいるのですから!」と教えてくれた。

大英自然史博物館展に来ているメアリー・アニングの展示

個人の強い興味や誠実な仕事が、時に人々を新しい時代へ連れいってくれる。そして現在、アニングや近代の科学に大きく貢献した人々の功績や貴重な化石を見ることができる「大英自然史博物館展」が開催中だ。イギリスに保存されている人類の知の結晶を見ることのできるまたとない機会にぜひ足を運ばれたい。

トップ画像:「メアリー・アニングの肖像画 グレイによる」©The Trustees of the Natural History Museum, London

展覧会名 大英自然史博物館展

開催期間 2017年3月18日(土)~6月11日(日)

休館 4月10日(月)、4月17日(月)、4月24日(月)、5月8日(月)、5月15日(月)、5月

22日(月)、5月29日(月)

時間 午前9時~午後5時(金・土曜日は午後8時まで。4月28日(金)〜30日(日)および5月3日(水・祝)〜7日(日)は午後9時まで。5月1日(月)・2日(火)は午後6時まで)

※入館は各閉館時刻の30分前まで

※春休み中、GW中の日中および会期末は混雑が予想されます。会期前半の平日のご来場もご検討いただければ幸いです。

整理券配布 3月22日(水)より整理券での対応を開始しています。

※混雑時はお受け取りの整理券に記載の時間での入場となります。

会場 国立科学博物館

住所 東京都台東区上野公園7-20

公式ホームページ http://treasures2017.jp

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