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美術館に週末さくっと行けちゃう大人になる!part2

 「そもそも美術作品のどこを見ればいいのか分からない。」

という言葉が今にも聞こえてきそうです。日本の一般教育では美術史の時間が少ないため、予備知識がないのは仕方のないこと。そんな日本でやはり人気があるのが、比較的に楽しみやすい印象派の作品群ですよね。作品数もとても多く、当時の日本画家もかなり西洋の印象派の影響を受けたこともあり、日本ではかなりの頻度で印象派の展示が行われます。オルセー美術館展など、印象派の作品を多く所有している美術館との企画展だけなく、モネ展、ゴッホ展やゴーギャン展など、有名な画家の特集展など、日本国内では名前の知れた画家は印象派のメンバーがほとんどではないでしょうか。

独特の色使いやタッチ、色彩豊かで見るものを魅了する印象派。果たして人気があるのはそれだけが理由でしょうか?みなさんが印象派を受け入れやすい理由を考えていたところ、美術作品の鑑賞の仕方のヒントがたくさん隠れていたので、印象派の人気と比較しながらご紹介します!

美術作品のどこを見るべきなの?

 

 

クロード・モネ-印象、日の出 – Wikipedia 

時代の理解
特にルネサンス以降の美術史では、〇〇派という時代の流れがとても激しいのです。みなさんがよく思うであろう「なんでこんな作品が評価されてるんだろう?この作品のどこに数十億円の価値が?」という疑問。実はこの多くは「この時代にこれをやったから」評価されてることが多いんです。今では自然に見かける技法やアイデアを使えば、現代で同じように評価されるわけではありません。今まで誰もやったことのなかった技法やアイデアをやったからこその評価だったりするんです。
そんな時代の流れを理解することは、美術作品を鑑賞する上で大切なことの一つ。印象派で言えば、その前に「写実派(レアリズム)」がありました。簡単に言うとこの時代の画家たちは、「見たもののできるだけ綺麗に、見えるままに描こう!」という考え。「絵画らしさ」を持ったタッチで描かれている写実表現が特徴です。 
そんな写実派ですが19世紀に入るとなんと、写真技術が発明されてしまいます。当初は写真一枚を撮るのに数時間もかかってしまった写真技術ですが、たった60年余りで、レンズやフィルムが発明され、数秒で撮影出来るようにまで進化し、瞬く間に世界中で有名になってしまいました。

ここで困ったのが、肖像画家として貴族から依頼を受けて生活をしていた写実派の画家たちです。その需要はどんどんと肖像写真に奪われてしまいます。あれよあれよと職を失っていく画家たちは考えます。「本当の写実とはなんだったんだろうか」と。 人間の見ている世界を丁寧に描いていた写実派に対し、それを疑っていく画家たちが誕生します。 我々は写真のように数秒で切り取られる静止している世界を見ているわけではありません。風で揺れる木々に、太陽の光にきらめき、ゆらめく水面。そんな輝いている流動的な世界を見ているのだ!と立ち上がったのが、印象派たちでした。こうして新しいタッチや色使いが生まれたわけですね。

と、少し長くなってしまいましたが、いかがですか?このように印象派だけを見るのではなく、なぜ印象派がこういう作風を用いているのか。ということを知ると、なんとなく見ていたそのタッチも少し違って見てくるかも。時代の前後を知って見るととても面白いですよね?
実はこのような説明、美術館はしっかりとしているんです。そう、チケットを買って展示会場に入った一番最初の部屋の壁。そこに文章で説明があるのをみなさんご存知ですか?
ちょっとややこしくって読み飛ばしてそのまま進んでしまう人も多いかも知れませんが、その展示の基本的な情報はパンフレットや壁の文章にしっかりと説明がされているんです。

 

フィンセント・ファン・ゴッホ – [自画像], パブリック・ドメイン, wikipedia
作家の人生

時代の流れを把握した後は、作家の人生をぜひ知って欲しいんです。作品には作家の思いや考えが詰まっています。この人はなんでこれを描いたんだろう。そんな疑問を作品から受けたことはありませんか?パッと思いつく画家は?と聞くと日本ではおそらくピカソかゴッホが真っ先に出てくるのではないでしょうか。この二人も後期印象派(ピカソはキュビズムにも)属されます。作品数も作風の変化も他を圧倒するピカソはもちろんとして、なぜゴッホがこんなにも人気なのでしょうか。
ゴッホの人気は、彼の人生に繋がっています。同じように有名な画家はいくらでもいるのに、ゴッホを見てみると、どうしてこうもゴッホの人生の話だけが取り上げられているのか、不思議になる程、彼の生前の話は世界中で知られているのです。

「生涯でたった一枚の絵しか売れなかった」という逸話もあるゴッホ。実際は数枚の作品が売れていたという研究結果もあるようですが、約2000枚の作品を残したといわれる彼に対してあまりにも残酷な数字。そもそもゴッホが画家として活動したのは、37年で幕を閉じた生涯の最後の10年間のみ。それまでは大手の画商会社で働いたり、聖職者、伝道師として、時に語学教師をしたりと様々な道を歩んでいました。 画家としての人生をスタートさせても作品は売れず貧乏生活。兄を信じ続け仕送りを続けた弟のテオ。同じ道を歩む共感者として信じた画家ゴーギャンとの、通称「黄色い家」での二ヶ月の共同生活。関係が悪くなりゴーギャンが去ったことがきっかけで自分の耳を切断してしまい、そのまま彼の精神状態は悪化。最後には自殺(他殺という説もありますが)で余りにも短い人生に幕を閉じます。

と、きゅっとまとめて書いてみた彼の人生ですがこんなにも波乱万丈!貧しい生活にも関わらず、そして作品が評価されないままでも、精神状態がこんなにも悪かったのにも関わらず、2000枚もの作品を残したゴッホ。こんな画家が描いた作品、気になりますよね。作家の人生を知ると、やはり作品を見てみたい!となりますし、作品の見え方も変わってくるのかも。難解な作品を読み解くためにも、作家の人生を知ることは、美術をより身近に感じる一つの糸口かも知れません。
大きな企画展となると、美術館には、実は五百円ほどで借りられる「音声ガイド」があるんです。作品のタイトルが書いてあるプレートヘッドフォンのマークがと数字にあるものをみなさんも見たことがあるはず。
これはこの番号を音声ガイドで聞くと、作品の説明が聴けるというものです。そのガイドの中には作品のモチーフなどの細かな解説や、作家の人生についてのガイドがあるものも。海外の大きな美術館でも日本語が用意されていることもあります。作品を一人で考えてじっくり見た後、ガイドを聴きながらもう一度作品を見ると違った発見があります。ぜひお試しください。

二回に分けてお話しした美術館について、そして美術作品の見方。いかがでしたでしょうか!少しだけ予習してから見にいくのもいいですし、あえて全くしないまま見えるがまま見て楽しむのも一つの楽しみ方。いろいろな楽しみがありますので、ご自分に合った美術館の楽しみ方を見つけに、今週末はお近くの美術館へ!いかがでしょうか。

ドイツ美大、Burg Giebichenstein Kunsthochschule絵画科在籍。画家としてドイツを中心に活動しながら、ライターとしてアート関連記事を多数執筆。

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