2010.07.14
八千代座100周年記念講演「木 Ki」
初夏のバルセロナは、エキサイティングな演劇&音楽祭が盛りだくさん! 国際的には16年目を迎えた先端音楽と映像の祭典SONARが有名だが、演劇、ダンス、ワールドミュージックをテーマにしたGRECも、実ははずせないフェスティバルだ。
GRECは、1976年に市内の有力な劇団メンバーが力を合わせて立ち上げたもので、すでにバルセロナ市民にとってはなくてはならない夏の風物詩になっている。
市役所や公的機関の援助が強力なため、多彩なイベントが6月中旬から8月1日まで、ローマのような野外劇場を含めたいくつかのシアター、古い教会、修道院、図書館、美術館、広場など、市内各地で繰り広げられ、内外の豪華な参加者の顔ぶれが毎年話題に。値段もリーズナブルなので、気軽にいろいろなジャンルの作品を観に行かれる。
今年のテーマは、SONARと一部共同の「Panorama Japó」という「日本特集」で、日本からはアート集団ダムタイプの舞台音楽をてがけていた池田亮司による光と音楽の競演「Spectra」の他、室伏鴻(むろぶしこう)の舞踏、勅使河原三郎のダンスパフォーマンス等が参加。また、三島由紀夫の「近代能楽集」を翻訳/解釈して上演した地元の 劇団の他、完全に日本とバルセロナの共同制作作品も話題を集めた。
熊本県山鹿市の八千代座の100周年を記念し、バルセロナの美術作家フレデリック・アマットの演出で、バルセロナのパフォーマー、セスク・ジュラベルトと日本の邦楽演奏家たち、舞踏家などとのコラボレーション作品「木 Ki」は、勧進帳などの長唄や、能を思わせる伝統的な邦楽の演奏にあわせ、能、狂言、 歌舞伎、あるいは舞踏のエッセンスをとりいれ、欧州と日本の文化が新しい冒険を産み出そうとした意欲作。実際に観た感想としては、エキゾチックな日本のエッセンスをたくさんとりいれようとして欲張りすぎたのか、多少消化不良気味だったが、あと少し地中海的なユーモアと奇想天外な大胆さが加われば、異なる文化のフュージョンにありがちな違和感を超える新しいアートになれたかもしれない。
近年のバルセロナでは、パリに負けないほど、マンガサロンとよばれる見本市や、コスプレイベントなどが、日本人がまったく関与しないところでも盛り上がり、アニメで育った若者たちが、徐々に碁や将棋、村上春樹や夏目漱石などの小説にハマるという傾向が進んでいる。
芸術的な異文化交流の現場では、海外で外国人が現地の人たちのために見よう見まねでつくる「なんちゃって和食」のように、日本人が違和感を覚える作品も少なくない。しかし、興味がなければ何もはじまらない。最近のバルセロナは、新たな異文化融合という名の飛躍にむけて、軽やかな助走期間に入ったようだ。
(文/浅倉協子)