海外アート事情

2010.07.21

「ゴミ」アートが投げかけるメッセージ

ブラジル(サンパウロ)| カテゴリー:オブジェ  

サンパウロ出身のアーティスト、エンリッキ・オリベイラ(Henrique Oliveira)。今にも動き出しそうな彼の作品は、サンパウロの道端で拾った「ゴミ」で創られている。2003年から創作開始したこの3Dインスタレーションは、ブラジル中で評判を呼び、2009年にはヒューストンやメキシコでも作品発表している。

「ゴミ」アートが投げかけるメッセージのサブ1写真【大】

「Tapumes」2008/木材3,2m x 6,2m x 0,9m

「ゴミは、コンテンポラリーな世界に提言することができる、イマジネーションの滞在的パワーです。」と説明するオリベイラ氏。価値を生じないとされる「ゴミ」という物体を、「ゴミ」と呼ばれる物体で溢れる現代社会へのメッセージとして使用する。そこには単なるリサイクルアートに収まりきらない勢いが感じとれる。

「ゴミ」アートが投げかけるメッセージのサブ2写真【大】

「Tapumes」2006/木材3,5m x 12m x 1,5m(写真左)/「Tapumes - Casa dos Leões」2009/木材(写真右)

ゴミを使用することを思いついたのは学生時代のことだという。プラスティック、セロハンテープなどさまざまな素材で実験を続ける中、特に興味を惹いたのは木材だった。「壊れた板を組み合わせることで出来上がるデザインは、まるで筆でインクを塗りたくったように見えた」と言うオリベイラ氏は、街中いたるところに木材が捨てられているのを目にし、自身の作品の素材として、テーマとして木材を中心とした「ゴミ」を選択した。「木材を道端で収集している中、例えば、色や書かれている文字など1つひとつが大きく異なっていることに気づきました。ゴミがもつ豊かな側面に魅せられてしまったのです」。

「ゴミ」アートが投げかけるメッセージのサブ3写真【大】

「Tapumes」2009/木材4,7m x 13,4m x 2m

見ている人を押しつぶしてしまいそうな迫力のある作品は、なめらかで、柔らかで、そして攻撃的だ。オリベイラ氏が収集する木材は、ビルや家の建築の際に、建築現場を囲う薄い低価格のベニア板である。建築が終了した際には、道端に放置され「ゴミ」となる。囲うために使用され、捨てられた木材で創った作品は、「tapumes」と名づけられている。ポルトガル語で、「フェンス」「板で囲う」という意味だ。

「ゴミ」と「フェンス」。この2つのキーワード的テーマをあなたはどう受け取るだろうか。いずれにせよ、波のように押し寄せてくるエンリッキ・オリベイラの作品は、あなたの目の前でぴたりと動きを止め、静かにメッセージを発しているのだ。

(文/高橋直子)

森と共生する巨大コンテンポラリーアート