Title:Pie Jesu ピエ・イエス
2024/10/4
少年猫は、ふんわりと少し上を目指す。優くんの場合、
生後八週間、母猫の庇護だった間に、父猫ピエールから、
男の生き方をざっと学んだ。
ケージ内での単独食が終わると、ピエールはオムツ着用でケージの外に出られる。そこで食事が終わるやいなや、トイレと同じ、床をカキカキする習慣だった。息子たちは皆、これを意味もわからず真似た。
優くんは一生帰れないのが当たり前の実家へ、頻繁に行き来する幸せな幼少時代を送った。ところが雄猫には、厳しい現実が待っている。
母猫は里帰りした息子を、ある時を境に邪険にしてシャーで、追い払い始めた。これは息子を一人前にするために、虎族の母が知っている智慧だ。虎は一山に一頭。
男の子は、自分の山を築かなくてはならない。
ボーイソプラノで歌われるウェバーの「ピエ・イエス」は、
一山の一頭を貫いた、無垢な少年の心を彷彿とする。
優くんはパパのような「人」になりたいと、少し上を目指していた。
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